サイト更新情報

7/31/07

以下は、今月のmp3のダウンロードトップ10です。やはり、新しい録音が多いです。一番人気は「ダンテ・ソナタ」。Youtubeの掲示板でも話題になっていた「Faust」も上位に食い込んでいます。

1) Liszt: Dante Sonata
2) Liszt: Two legends: Wave
3) Brahms: Piano Sonata mov1
4) Debussy, La pluse lent
5) Liszt: Faust Gretchen
6) Schubert: Am Meer
7) Debussy: Pagodes
8) Brahms: Sonata Mov2
9) Liszt: Funeral March
10) Brahms Rhapsody Op119-4

更新情報)

第四回ニレジハージ国際コンクールの広告(クリック)を「資料室」に掲載しました。
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7/30/07

イングマール・ベルイマンが亡くなったそうです。89歳でした。フェリーニ、タルコフスキーらと並ぶ巨人、最後の巨匠監督だったと言ってもいいでしょう。

ベルイマンは音楽センスの鋭い作家でした。印象深い音楽をさりげなく使うことの巧さにかけては、アンドレイ・タルコフスキーと双璧でしょう。「ファニーとアレクサンデル」でも、シューマンの「女の愛と生涯」、「ピアノ五重奏曲」などが効果的に使われていました。こういうのは、普段からの音楽への理解度がそのまま出るものです。この点では我らが黒澤明は、こう言ってはなんですが、小中学生のセンスしか持っていなかったように感じます。

ベルイマンは熱心な音楽愛好家で、1955年のウィーン国立歌劇場再建記念公演の伝説的な「フィデリオ」の公演に立ち会い、鋭い批評文も残しています。また、彼の3度目の夫人、K. Lareteiはエストニア出身のコンサート・ピアニストで、カーネギホールなどでも公演を行っていました。Lareteiと別れた後も、ベルイマンは映画に使う音楽についてLareteiに相談していたようです。彼の映画があれほど音楽的なのも頷けます。

多くの音楽ファンは、ベルイマン=モーツアルトの「魔笛」の印象が強いかもしれません。ただ、私は、「魔笛」はベルイマンの中では、どちらかというと下位に来る作と思っています。「魔笛」には、他の作品にあるような緊張感、切れ味も感じられません。そもそも「魔笛」というオペラ自体、映像が邪魔になるタイプの作品です。

ベルイマンを見ていない方は、まず、「ペルソナ」か「ファニーとアレクサンデル」から入るのがいいのではないでしょうか。前者はインディー映画のような切れ味があって、若い人にも十分アピールしますし、後者はベルイマンの集大成。圧倒されます。

ところで、ベルイマンという日本語表記は適切なのでしょうか。英語ではBergmanで、英語圏では有名な女優と同じくバーグマンと呼ばれています。スウェーデン製のドキュメンタリーでは、「ル」を弱く発音してベルマンと呼ばれていました。どうしてもベルイマンとは聴こえないのですが。

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7/27/07

イギリスの音楽誌、「Piano」がニレジハージ特集を予定しています。昨日、editorの方に写真を提供いたしました。9-10月号で、8月下旬に発売になるとのことです。fugue.usのアドレスも掲載されるとのことでした。

更新情報)
1973年、Forest hill clubで演奏された、リストの「 哀れならずや」をアップロードしました(「ニレジハージの晩年の未発表録音」参照)。

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7/24/07

以前、ニレジハージ作品の、カナダの作曲家/ピアニストによるプライヴェート演奏をアップしたい、と書いたことがあります。当の作曲家/ピアニストに計画を持ちかけたところ、「光栄な話」との丁重なご返事。彼としては、mp3だけでなく、それよりも情報量の多いフォーマットのファイルも載せたい、ということで、私のサイトでmp3、彼のサイトで大きいファイル(特別なプレイヤーが必要)を載せよう、という話で進んでいます。

双方の都合もありますし、国際ニレジハージ財団に話す手間を考えると、アップロードできるのは8月の中旬以降、たぶん9月頃になります。話がこのまま順調に進めば、ですが。いまのところ、4作品、5録音を予定しています。

作品を紹介するという意義はもちろん、ニレジハージ作品を有力ピアニストに取り上げてもらうような流れをここで作れれば、と思っています。ここ数年、ロマン派のピアノのレパートリーが多様化していますので、興味を持つピアニストやレーベルはいるのではないでしょうか。

M&AのCDは9月の末に登場することで決まりました。CDトラックの修正はなさそうです。

(更新情報)ニレジハージの1939年の作品、「A Soldier of Fortune」の最初のページ(クリック)を「資料室」にアップロードしました。この楽譜で興味深いのは、ニレジハージによる、下の方にある「Rhythmic Notation」です。例えば、「音符の上下にある"R"という文字は、通常のタイミングよりも長くおさえられるべきである。二つのR、"RR"は、考慮すべきほど長くおさえる、という意味である。"R-p"という文字は、音符をほんの少し長くおさえる、という意味である。」とあり、「特に指定がない限り、真のルバートで弾かねばならない」ともあります。

この偏執病的に細かい指示には、「私の作品は、(他のピアニストは)自分のように弾かなければ意味がない」というニレジハージ晩年の言葉が共鳴してくるようです。

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7/22/07

Kevin Bazzanaが、Glob and mailにおいて、ノーマン・レブレヒトの新刊本、「THE LIFE AND DEATH OF CLASSICAL MUSIC」への批判を行っています。彼がアドレスを知らせてくれました。
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/LAC.20070721.BKBAZZ21/TPStory/Entertainment/Books

私もこの本を数ヶ月前に読んでいます。Kevinと似た感想をもち、レブレヒトの視点を批判する文章をかなり書いていました。これを機会に、「Intermezzo」にその文をアップロードしておきます(「レブレヒトの悲嘆ーークラシック音楽は死んだのか?」(クリック))。

ピアニストの知人が、「1978年のニレジハージのドキュメンタリーをYoutubeにアップロードした」と知らせてきました。以下です。

http://youtube.com/watch?v=WB8RfLtVgpU

冒頭のヒゲ青年はグレゴール・ベンコーです。

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7/20/07

メンフィスより帰還しました。赤茶けた田舎町、という印象でした。マリンブルーみたいなシアトルに帰ってくるとほっとします。地元のアメリカ人との話題で、小泉前首相がグレイスランドを訪れた時のプレスリーパフォーマンス話題にのぼりました。小泉氏、アメリカ人の間ではいまだにカリスマ的人気があるんですよね。

メンフィスのホテルで、HBOドキュメンタリーのComa(昏睡)という番組を見ました。事故や犯罪によって脳にダメージを受け、昏睡状態となった4人の患者の経過と家族、医療グループの看護を追っています。私は植物状態とは昏睡状態と良く似たものと誤認していたのですが、植物状態というのは、目を開き、眼球運動や瞬きなどはやります。ただ、その動きに意味があるかどうかは別の話。植物状態の場合は外界からのシグナルに一切無反応です。通常、1年以内に植物状態から覚めない場合、そのまま回復することはなく、恒常的な植物状態に留まります。番組の4人のうち、2人は言語や聴覚障害等の問題を抱えつつも快復に向かい、1人は慢性的な植物状態に移行、1人は死亡、という道をたどっていました。静かなタッチながら、医療スタッフや家族達の心の揺れ動きを冷静かつ的確に捉えており、感動的なドキュメンタリーでした。HBOのドキュメンタリーはどれも質が高く、NHKスペシャル並みのクオリティがあります。

この番組を見て思い出したのですが、数年前に、マリア・カラスやティト・ゴッビらと共に、イタリア・オペラ黄金時代を支えたテノールのジュゼッペ・ディ・ステファノが暴漢に襲われ、頭にダメージを受け、長期の昏睡状態に入るというショッキングな事件がありました。2004年のことです。

http://www.cbc.ca/arts/story/2004/12/28/distefanoawake041228.html

によれば、ディ・ステファノは1月後に意識を回復したそうですが、障害等、その後の経過はどうなのでしょうか。

追記)上のような事を書いていたら、全くの偶然ながら、テノールのジェリー・ハドレーの訃報が飛び込んできました。彼は、80年代、バーンスタイン指揮の「キャンディード」「ボエーム」のDG録音で主役を唄い、ポスト・カレーラスの一人として注目されていました。その後、名前をきかないと思っていたところ、10日程前、頭部をライフルで打ち抜き、昏睡状態に陥っていたようで、生命維持装置を外されたとのこと。報道によれば、鬱病状態が続いており、破産宣告したばかりだったそうです。

http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=12100749



更新情報)
1973年、Forest hill clubで演奏された「 Rhapsody: OP. 119-4」をアップロードしました(「ニレジハージの晩年の未発表録音」参照)。

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7/16/07

スタンリー・ジョーダンの公演に行ってきました。ジョーダンは、まるでピアニストのように、両手の指で弦を叩いてギターを弾くので有名なギタリストです。20年以上前に彼が登場した時は、その超絶技巧がジャズファンの間で話題になったものです。数千人入る大きな会場でも弾くジョーダンですが、今回の会場はちいさなジャズクラブということで、客は30-50人くらい。彼が立っているのも私が座っているテーブルから2mくらいのところという、アットホームな公演でした。有名アーティストというよりは、ストリートミュージシャンの雰囲気が濃厚にある人でした。ピアノとギターを両方弾きながら、アルヴォ・ペルト風味付けのフリージャズを一曲やっていましたけど、これは全く感心せず。ピアノの技術がしっかりしていないこともあって、メリハリの無い音楽になっていました。しかし、本領のギター演奏はさすがで、技術、表現力とも、非の打ち所の無いものでした。

ラジオで生中継もされた公演が終わった後、クラブの端っこで、私たちお客と気さくに話してくれました。モーツアルトのピアノ協奏曲第21番の第二楽章をギターソロで弾いていたので、そのことを言うと、うれしそうに、「そうなんだ。クラシックは好きで、バッハのインベンションも舞台で弾くんだ!」と言っていました。彼のインプロビゼーションからも、クラシックやインド音楽の影響が聴こえてきました。日本公演は計画中、とのこと。

明日からメンフィスに数日行きます。

更新情報
1919年に作曲された「Mephisto Fantasie」の自筆楽譜を「資料室」にアップロードしました。24ページの大作で、後年の作品に比べて、より華麗な技巧が使われています。

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712/07

イチローには本当に驚かされますね。
今晩、試合を見に球場に行くので、契約延長ほぼ決定、MVPという土産を持ってきた彼が地元のファンにどのように迎えられるか楽しみです。これまでにない熱狂的な歓声が聴けるのではないでしょうか。

イギリスの「Piano」という雑誌でニレジハージが特集される、という情報が入ってきました。「Lost Genius」やM&AのCDが取り上げられるようです。ニレジハージのブーム再来になるのでしょうか。詳しい情報が入り次第、情報をアップデートします。

いままで、1973年のForest Hill Clubでのコンサート(クリック)からの録音はアップロードしてきませんでした。これは、手持ちの録音がテープ音源ということで、ファイル化が面倒、という理由で後回しになったためです。しかし、演奏内容からいけば、この演奏会のニレジハージは、70年代のベスト・コンディションといっていい状態で、ミスタッチも比較的少なく、演奏の集中力もいつも以上に高いものでした。録音も良好です。ただ、冒頭の「二つの伝説」は、ニレジハージが「Old first churchの時を上回る演奏は不可能」と録音機器をまわさせなかったために、録音が現存していません。また、3曲目のLa Lugubre Gondolaは、冒頭20秒の欠落があります。この欠落はオリジナルテープにあるようです。このリサイタルから、4曲がM&AのCDに採用されました。今から思うと、もう2-3曲入っても良かったのではないかと思います。

そのForest Hill Clubのコンサートから、リストの葬送行進曲(1867) をアップロードしました。(「ニレジハージの晩年の未発表録音」参照)。CDから漏れたのがもったいないほどの演奏です。

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7/7/07

Kevin Bazzanaからのリクエストで、ニレジハージの1917-19年の作品「Grand Sonata Heroique」と、「Trimuph!」の出版楽譜の最初のページを「資料室」に掲載しました。彼曰く、「ニレジハージ作品のリスト的スタイルが楽譜によく現れている」。

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7/6/07

Kevin曰く、アメリカのピアノ愛好家の集まるPianophilesというディスカッショングループで当サイトが話題になっていたとのこと。数日前、知人の日本語ブログで紹介されたことも手伝って、ここ数日、サイトへのアクセス数が通常の数倍にあがっていました。アクセスする時にトップページを飛ばしてしまう人が多いので、カウンターにはあまり反映されないんですけどね。「波間」以上に、「ダンテソナタ」をダウンロードする方が多いようです。

英語版のWhat's newに、"Lost genius"のブックレビュー三本を掲載しました。好評です。興味のある方は左のリンクから英語版にお入りください。

カナダの作曲家・ピアニストで、ニレジハージの曲を公開演奏している方がいます。ある作品のプライヴェート録音がKevin経由で私の手元にあるのですが、これがなかなか魅力的な曲+演奏なのです。ここ数日、録音と作品のアナリーゼを、当サイトを通じて発表するという案を作曲家に持ちかけています。

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7/5/07

「海辺にて」

昨日は独立記念日でした。例年、職場の窓から花火を眺めつつ皆で一杯やったり(左)、湖沿いにアパートを持つ友人の家にあつまったり。せいぜい、一尺玉があがるかあがらないか、という規模なので、長岡花火大会のようなスケールはないです。隅田川のような派手さもありません。それでも、異国で日本製の花火を見るのはうれしいものです。

ニレジハージの未発表録音を一つ。Old First Churchのリサイタルより、シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」より「海辺にて」のリスト編です(「ニレジハージの晩年の未発表録音」参照)。個人的には好きな演奏の一つで、M&AのCD
に入っても良かったのではないかと思います。

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7/3/07
「フルトヴェングラー」

ニレジハージのお気に入りの指揮者は、ウィレム・メンゲルベルクとヴィルヘルム・フルトヴェングラーだったそうです。二人とも19世紀ロマン派の体臭を濃厚に持っていた指揮者で、ニレジハージが好んでいたのもよくわかります。二人の「トリスタンとイゾルデ」の「愛の死」の演奏には、表現の方向性に共通するものがあります。

ところで、フルトヴェングラーは、幼少時からピアノ教育を受けていたこともあり、ピアニストとしてもかなりの腕前でした。1950年の8月31日にザルツブルグで弾いたバッハのブランデンブルグ協奏曲の弾き振りの録音が残っています。第五番の第一楽章後半、フルトヴェングラーがカデンツアを弾き始めると、それまでの祝祭的な雰囲気が、瞑想、静謐の世界へと一変します。職業ピアニストではないので、タッチは必ずしも洗練されているとは言えないのですが、出てくる音楽が素晴らしい!響きは霊感に満ちており、彼だけにライトが当たっているかのような、一種、超絶的な空気を醸し出しています。

残念ながら、彼のピアノ録音はバッハの録音新旧2種類と、シュワルツコップと録音したヴォルフ歌曲集しか残っていません。ただ、ベートーヴェンのソナタなどはプライヴェートではよく弾いていたそうです。ハンマークラヴィーアソナタは大変優れた演奏だった、という秘書の証言が残っています。彼ほどの天才的なフレージング感覚と巨大な音楽性、そして達者なピアノ技術があれば、素晴らしいソナタ演奏になっていたことは容易に想像できます。

更新情報)1931年の未発表作品、Longing for Americaの楽譜原稿を「資料室」にアップロードしました。6ページの作品です。