サイト更新情報

12/31/07

大晦日にあたり、2007年に一番印象に残った音楽関連の本、CD、コンサート、DVDをあげます。新譜にはこだわっていません。


本: Lost Genius (by Kevin Bazzana)
このサイトとしては、これをあげない訳にはいかないでしょう。個人的にも関わりましたし....。仕事以外で名前が本に載ったのも初めてです。客観的に見ても、今年発売された音楽関連の本の中では、十分注目に値する作と言っていいと思います。



CD: アンジェラ・ヒューイット「バッハピアノ協奏曲集」(Hyperion)
これは9/21/07のエントリーで既に触れたので繰り返しません。久しぶりにいいピアノの音を聴きました。トグネッティ指揮のオーケストラも素晴らしいものでした。



コンサート:タウリスのイフェゲニア(シアトル・オペラ)
これも10/21/07のエントリーで触れました。メトロポリタン歌劇場との共同プロダクション。グルックの素晴らしい音楽、見事な演出。「やられた!」という気分になったのは、これまた久しぶり。至福の時を過ごしました。これは日本でもやって欲しいプロダクションですね。



DVD: HAPPY END OF THE BAND:PIZZICATO FIVE BSフジ・スタジオ・ラスト・セッションズ

今年一番購入したのはDVDで、数多くのオペラ作品を見ました。いい作品が目白押しでした。それにも関わらず、今年一番印象に残ったのは非クラシック作品。ピチカート・ファイヴの解散ライヴです。

ピチカート・ファイヴは、日本にいた90年代、アコースティック・ギターを中心としたライヴをFMで耳にしたのが出会いです。その渋さ、格好良さにいっぺんで魅了されました。アメリカに来てから驚いたのは、別に音楽マニアでもない友人宅のCD棚を見ると、U2やエミネムなどにまじって、ごく普通にピチカート・ファイヴのCDがあったりするんですよね。それも一度や二度ではありませんでした。さりげなく欧米の一般家庭に浸透してしまうあたりにも、このグループのスマートさが表れているように思います。

私はピチカート・ファイヴはアコースティックから入ったのですけれど、周知のように、リーダーの小西康晴の手法はアコースティック路線でもなんでもありません。それどころか、彼は昔から電子音、リミックス、コラージュ手法を多用しています。よく意味のわからない「シブヤ系」というレッテルより、「アンディ・ウォーホール系」とでも呼んだ方がいいような、チープでポップでレトロで都会的な音楽です。そういった面を理解しつつも、「もう一度、あのアコースティックのピチカート・ファイヴを聴きたい」と思い続けていました。この解散ライヴを収めたDVDでは、完全な生音ではないですけれど、それでもFMで魅了された、アコースティックのアダルトな雰囲気があります。「東京は夜の七時」もラウンジ・ミュージック風アレンジで決まっています。もう7年も前のライヴですけれど、最後の最後にこんなに格好良く決めてくれていたんだなあ、と感動しました。ラストシーン、野宮真貴の半泣きの表情も印象的でした。

それにしても、FMTokyoは、あのアコースティック・ライヴをCD化してくれないものか.........。

それでは、2008年も引き続きよろしくお願いいたします。

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12/30/07
「"Lost Genius"がアメリカ音楽出版協会のベスト・ブックにノミネート」

"Lost genius"がAmerican music pressによって選出される「Best Book」にノミネートされています。

http://www.musicpressreport.com/

他に4作品が競合しており、Beatles関連の本もあります。この本が各方面から評価されているのは関係者の1人して嬉しいところです。

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12/29/07

「グレン・グールド、ニレジハージを語る」

Kevinがいままでに手がけた二人の奇人、グールドとニレジハージのつながりを示すテープが出てきました。グールドは最晩年に、ブラームスの「バラード・ラプソディ集」を録音しているのですが、そのセッションのテープがグールドアーカイヴに残っています。その最後の方で、興の載ったグールドがエロール・ガーナー(ジャズ・ピアニスト)を始めとする数人のピアニストのスタイルでバラードを弾き始めるシーンが収められていました。

http://dotsandloops.net/headlines/iid/612701

http://www.collectionscanada.gc.ca/obj/028010/f3/nlc005663.ram


25:47あたり、エンジニアが、「ニレジハージ・ヴァージョンで聴きたいな」と言うとと、グールドはなぜか爆笑し、続けて以下の会話が交わされます。

GG「彼のスタイルは研究したことがないよ!」
エンジニア「彼のレコードをいくつか送ろう」
GG「ノー、ノー。もう持っているよ。だから研究していないのさ!」


カナダの国会図書館にあるグールドのレコードコレクションのリストの中に、ニレジハージのMasterworks盤があったそうです。ただ、未開封とのこと。グールドはホロヴィッツの演奏を嫌っていましたから、同傾向のニレジハージも駄目だったでしょうね。

早速、「アーティスト、ニレジハージを語る」の項に加えました。


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12/26/07

「クラシックCD異稿・編曲のよろこび」

本を一冊ご紹介いたします。

この本は、ショパン、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチ、ムソルグスキー等、様々な作曲家達の異稿、編曲版に焦点を絞り、主として録音の紹介をおこなっているものです。複数の執筆者の方が参加されており、それぞれプロの音楽評論家の方ではないのですが、それだけにマニアックなコレクター精神のようなものが反映されており、一昔前のプロの音楽評論家には到底手の届かないようなことまで網羅しています。情報の密度の濃さには感心させられました。ただ、興味の対象が対象ですから、万人向けというよりは、読者を選ぶように思います。中・上級者向けですね。

何の変哲もないバイヤーズガイド、あるいは評論家の主観先行の感想文集の域を出ないバイヤーズガイドが氾濫する中、こういう企画の本は貴重ですし、発刊後数年たって、意義を増していく本になるかもしれません。情報が豊富なので、事典的な使い方もできると思います。ある意味、録音市場が飽和し、音楽の嗜好がかつてなく多様化してきた今でこそ、こういった本が出てきているのだと思います。これからは、ピアノロール-SP期の演奏家達に焦点を絞ったもの、作曲家の自作自演に焦点を絞ったもの、東洋、北欧や東欧の知られざる作曲家達に焦点を絞ったもの.....そういった、通好みのツボを刺激するような、ちょっと変わった企画のバイヤーズガイドが歓迎されていくような気がします。特に前者二つは、パブリックドメインの音源がかなり使えますから、webサイトとセットにしたら結構面白いものが出来るんじゃないでしょうか。読みながら、そんなことを感じました。

私の知人では、木下淳さんと、鮫島奈津子さんが執筆者に名を連ねています。木下さんはショパンとラフマニノフ、鮫島さんはショスタコーヴィチを担当されています。木下さんは、ラフマニノフの項で、Music and Artsに収められたニレジハージ編曲のラフマニノフのピアノ協奏曲第二番の演奏をp163で紹介されています。

本はAmazonから購入できます。
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12/23/07

Kevin Bazzanaによるニレジハージの伝記、"Lost genius" がイギリスの賞を獲得しています(The International Piano Awards 2007: Book of the year).受賞に寄せられた文章は以下。

"傑出した音楽神童の、興味深く、そして悲劇的な物語" はこの本のサブタイトルとして正確なものである。ここで対象となっている神童とはアーヴィン・ニレジハージ(1903-87)で、彼の驚くべき人生のストーリーは、フィクションにしてもあり得ないほどのもである。この、流麗に、確信を持ち、そして完璧に調べられ、まるで小説のように読める伝記の中で、バザーナが彼のストーリーについて教えてくれる。"

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12/20/07

CTVドキュメンタリーのエンディングです。このシーンのニレジハージはウィスキーグラスを片手にご機嫌で、呂律も少し怪しげです(このCTVドキュメンタリーではもっとベロベロに酔っぱらっているシーンがあって、そこでは、世話になったベンコーの事を滅茶苦茶言っています)。

「もしかしたら、私がピアニストよりも人間として偉大なのかもしれないって、君が私に言ってくれたらなあ、君にいまここでキスしてやるよ。だって、そっちの方が自分にとっては大事だからね..........もしきみが、”サー、あなたはピアニストとして以上に、人間として偉大なんですよ”言ってくれたなら.......。さあ、そう言ってくれるかな?」

下は数年前のクリスマスに、オリンピック国立公園のRuby Beachという場所で撮った一枚。人っ子一人いない大自然でした。

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12/18/07

「ニレジハージとピアノ」

本日、ハンブルグで制作されたM&AのCDがカリフォルニアに郵送される筈です。

ニレジハージが生涯の大半において、ピアノを持たない生活を送っていたことについて語っています。音声はこちら。

「ピアノを持っていなかったことについて残念に思ったことはあまりない。音楽が内面から聴こえてくるからね。実際の音は必須じゃない。誰かのために弾きたいと思った時か、特別な場合を除いて、ピアノを持っていないことについては、あまり残念に思っていないんだ。ピアニストの発言としては奇異に聴こえるだろうが、これが事実なんだ。」

同様の発言は日本でのインタビューでもなされていました。「指を動かせば音が聴こえるし、そちらの方が音がいい」と話していました。

ここまで極端な人はなかなかいないとは思いますが、ピアニストの中には、驚くほどピアノを気にかけない人もいます。モンサンジョンの本に、晩年のリヒテルが自宅でクラヴィノーヴァで練習している風景がでてきました。当時のクラヴィノーヴァのタッチでは、練習にはならないのでは、と思うのですが.......。

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12/17/07

CourierPost Onlineに"Lost Genius"の書評が載っています。サウス・ジャージーのローカル紙です。

http://www.courierpostonline.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20071216/COLUMNISTS02/712160333

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12/14/07

ニレジハージが8歳の時、バッキンガム宮殿で弾いた時について語っています。音声はこちらから。おおまかな内容。

「1911年の6月にバッキンガム宮殿でメアリー女王の前で弾いた....。英国皇太子(後のエドワード8世。王位を捨てて米国女性との恋を選び、ウィンザー公として知られた)もおられた。なかなか面白いプログラムだったよ。ベートーヴェンの「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」の変奏曲、モーツアルトのロンド、ショパンのワルツ、グリーグの叙情組曲、ラフマニノフの前奏曲、リストのハンガリアン狂詩曲第二番、それから私の作品。陛下はとても喜んでいたよ。」

伝記によれば、女王は、「とても美しい」と賞賛、皇太子は「激しく拍手」していたそうです。

その時にバッキンガム前で撮影された写真はこちら
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12/12/07

ニレジハージがスラム時代のことを語っています。音声はこちらから。CTVのドキュメンタリーからです。おおまかな内容は、「ピアニストとしてのキャリアが世に言う意味で「終わった」時、私はそれを避けられないこととして受け入れた..........。自分にとって大きな意味を持つ出来事ではなかったし、今でもそれは変わらない」

今入った情報です。M&AのCDのリリースが少し遅れています。もうCDは出来上がっているようですが、今月末にならないとカリフォルニアに到着しないとのこと。もう少しご辛抱ください。日本にお目見えするのは来年になりそうです。
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12/11/07

「セザール・フランクの誕生日」

昨日は、セザール・フランクの誕生日でした。フランクはニレジハージと共通するものが多いんですよね。神童であったこと、若い頃ヴィルトオーゾとして鳴らしたこと、壮年期は忘れ去られ、ごく一部から熱狂的な支持を受けたこと、そして脚光を浴びた晩年.......。二人ともリストとワーグナーの影響を受けただけあって、作る曲も似たところがあります。サイト名も、もともとは、二人を並べて取り上げようと思ったところから派生しています。今のところ、ニレジハージのサイトばかりが大きくなってしまっていますけどね。

フランクの音楽を初めて聴いたのは小学生の頃で、有名なイ長調のヴァイオリン・ソナタでした。いつか弾きたいと思い続け、数年前、プロのフルーティストの方と第三楽章と第四楽章を合わせるチャンスがありました。いざ合わせた時には、楽譜から溢れ出てくる楽想と情報量の多さに圧倒され、思考停止のまま曲に弾かされるような状況に陥りました。よく知っていたはずなのに.........。フランクの弟子であるルクー(Lekeu)のヴァイオリン・ソナタも弾いたことがありますが、フランクのソナタのように、曲と否応無しにがっぷり四つにならされ、しかも演奏中に曲のパワーに圧倒される、ということはありませんでした。改めて凄い曲だと思いました。

フランクのソロ・ピアノ曲では、「前奏曲・コラールとフーガ」「前奏曲・アリアとフィナール」が著名ですが、二曲とも大変な難曲です。CDはいくつか出ています。前者についてのおすすめは、フランスのピアニスト、Alice Aderによるフランク作品集(Fuga Libera Label)で、オルガンの名曲である「前奏曲・フーガと変奏曲」のピアノ編曲版の素晴しい演奏も収められています。おそらくフリードマンの編曲だと思いますが、この編曲の方がバウワー版よりもリリカルな美しさが際立っています。まろやかな音色で、高貴に、ロマンティックに、そして慎ましく弾いています。カップリングのピアノ五重奏、前奏曲、コラールとフーガ も名演です。

AderのLekeu作品集(Harmonia Mundi Fr.)に収められていたピアノ四重奏曲も、素晴しい演奏でした。彼女にここのところ新譜がないのが残念です。

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12/10/07

「サイトからーー"婦人とナイチンゲール”」

サイトにあるファイルのうち、あまりダウンロードされていないものも時々紹介していきたいと思います。

ニレジハージは青年時にかなりの数のピアノロール録音を残していますが、ピアノロールの限界からか、全ての録音を気に入っていた、という訳ではないようです。彼が後年、Mike Starrとのインタビューで出来上がりに満足した、と話していたのが、グラナドスの「婦人とナイチンゲール」の録音でした。
http://www.fugue.us/Lady_and_Nightingale_1.mp3

なんとも甘美な演奏だと思います。

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12/7/07

Music and Arts が、ニレジハージのCD発売を公式にアナウンスしました。(CD-1202(2))

http://www.musicandarts.com/1207_New_Class.html

同サイトにLost Geniusの邦訳の事も少しかいてあります。もうライセンス取得から半年近くたっているので詳細を書いてしまってもいいと思いますが、邦訳の出版社は春秋社です。出版社はいくつかあたり、最終的にここに落ち着きました。春秋社への橋渡しや、春秋社に提出した資料(当サイトの一部、日本の章の訳、CD等の周辺情報など)の作成にあたっては、グールド研究家として著名な宮澤淳一さんのご助言を頂きました。宮澤さんには、日本で木下淳さんに紹介していただきましたが、その前から宮澤さんの知人であるKevin Bazzanaを通じて彼のことは聞いていましたし、Kevinが時々複数の友人におくるメールの宛先に宮澤さんのアドレスを見たこともありました。世界は狭い、ってことですね。

Kevin と、カナダの出版元のM&Sの編集者、Marilyn Bidermanには、私が宮澤さんと連絡をとりつつ動いている、ということを春先から何度か言っておいたのですけれど、打診先としての春秋社の名は伏せていました。そのせいか、夏に春秋社がライセンスを取得した時には、それが我々の活動から直接来た成果だとは気づかなかったようです。経緯を知らせたら、吃驚すると同時に大変喜んでいました。Kevinとしても、ニレジハージが愛した日本での出版は念願でしたから。

私は出版関係は門外漢なのですけれど、これは友人・知人間のコネクションで話がうまく進んでしまった、という珍しい例かもしれません。もちろん、Kevinの実績から来る信用と、"Lost Genius"がそれだけの内容を持つ本だからこそでしょう。翻訳も優秀な方がやってくれるそうで、期待が持てます。

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12/6/07

ニレジハージ1982年来日時の写真(幡野好正氏撮影)を資料室に加えています(#12#15)。

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12/5/07

3日のエントリーでちょっと書いたことです。Kevinに訊いたら、「書いてもいいと思う」ということで、書くことにします。

ドイツの楽譜出版社最大手であるSchottが、ニレジハージの復活に本腰を入れることになりました。ここ数ヶ月、そういう動きが私のところまで伝わっていました。数日前に、更新情報にも何度か登場した財団のMattheus Smits氏と協定を結んでいます。Schottのように、ニレジハージの遺産を有効に活用できる組織、国際的にも中心軸となることができる組織が、その権利を得たことは喜ばしいことです。

まずは、ニレジハージの作品の楽譜を早ければ今月末までに出版したい、という話です。Tragic Victory等が含まれる筈です。その他の希望としては、未発表作品の楽譜の出版、過去の公式音源のWergo(Schott関連のレーベル)からのCD化、ドキュメンタリー作品のDVD化などを考えているようです。Desmar盤のCD化?まだわかりません。Schottの最大のターゲットの一つであることは間違いないでしょう。どうもニレジハージ関連は人間関係がドロドロすることがあるようなのですが、今度は皆が協力して欲しいものです。

いい事ばかりではありません。財団から著作権がSchottに移るとなると、このサイトもファイルの使用などで規制を受けるかもしれません。できるだけこのまま続けていきたいとは思っていますが...........。


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12/4/07

11月のダウンロードファイルトップ10です。www.fugue.us/WAVE.mp3のようにタイプするとアクセスできます。

/WAVE.mp3
/Mazeppa.mp3
/flower_waltz.mp3
/Brahmsmove1.mp3
/Il_Penseroso.mp3
/DANTE_SONATA.mp3
/Liebestod.mp3
/Mazurka_In_C-sharp_minor.mp3
/Faust-Gretchen.mp3
/Soul_of_monster.mp3

実は、ここ数ヶ月、Wave.mp3以上ににダウンロード数の多いmp3ファイルが一つだけあります。彼が「ニレジハージ」と喋っているファイルです。インタビュー音声は結構ありますので、近いうちにその一部をアップロードしてみようかと思っています。

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12/3/07

忙しいもので、少し更新が滞っております。お許しください。近日中に、ニレジハージ関連でいいニュースを発表できるかもしれません。書けない情報も結構ありますので、まずは許可をとらないと.......。

読者の方から、DesmarのNyiregyhazi plays Lisztの入手方法について質問されました。Ebayや中古レコード屋をあたるのが一番の近道です。特に、Ebayでは常設展示のように出品されています。CD化については、今のところ確たることは言えませんが、そういう話もないではありません。これについては、情報が入り次第、お知らせします。

ニレジハージの伝記、「Lost Genius」が、The Globe and MailとThe Washington Postの「One of the best books of 2007」の一つに選出されています。後者の評の邦訳はこちらにあります。