アンジェロ・ヴィラーニ・アット・BBC
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パーソナリティ(以下、P):
さて、映画のプロットのような話です。若き神童のすばらしいキャリアが突然の怪我によって妨げられ、22年後に復活。オーストラリア出身のアンジェロ・ヴィラーニ
は、神経痛のために、1990年の権威あるチャイコフスキー・ピアノコンクール参加への辞退を余儀なくされました。原因は子供の頃に重
いバックを持ったとか、そういう些細なものだったようですが、彼は治療を求めてロンドンに移り住み、長く復活の機会を伺っていました。今週末、彼はピカデ
リーのセントジェームズ教会で復活コンサートを行います。彼がスタジオにやってきた時、彼にあの怪我が人生をこれほど劇的に変えると思っていたかを訊いてみました。
アンジェロ・ヴィラーニ(以下、V):
自分にとって、最初はそれほどがっかりする状況ではなかった。私はこう思った、「この手の問題はいつもアスリートに起こる。大事な事は前に進む事と、いい
専門医を見つける事」。だから私はそれをやったんだ。「まず、オーストラリアでベストの専門医を見つけるとしよう」。そして、最高の専門医達のところへ
通ったのだが、誰も原因を解明することができなかった。というのも、明確な痛みや症状が無かったからだ。あったのは恒常的な若干の感覚の喪失と、例えば圧力の感覚に喪
失で、こういったものは、もちろん高いレベルでの演奏には必要なものだった。もし自分がレンガ運び屋とか、そういう仕事をしていたら気づかなかったろう。
指の微妙な感覚がいらないからだ。しかし、ピアノやコンピューターでは、手の問題にはすぐ気がつくものだ。
徐々に、問題が簡単には解決しないことがわかってきた。そこで、あらゆる治療に通った。まじない師や精神科医にも行って、私の脳や精神状態に問題がないということを確かめてみたりもした。
P: 結局、原因は石灰化したScar Tissue (怪我後に出来た新生組織)だったわけですね?
V: そうだ。結局見つけるのに3-4年かかったが、非常に賢いカイロプラクターが、石灰化した組織を私の背中に見つけた。彼が言うには、「こんなところに圧力がかかっているのなら、右手の運動機能に問題を起こしてもおかしくない」。
P: いつ、「自分はまた弾けると思ったのですか」?
V: 1993年頃にこの専門家に会った。その半年後には状況が良くなるのを確認した。
P: しかし、それからもう20年です。突然改善するのではなく、状況がゆっくり良くなって行ったようですね。
V: その通り。
P: ちょっとびっくりしたのは、あなたはロンドンでタワーレコードで働いていたのですよね。ピカデリーの支店で客に助言をしていた。それから小学校でピアノを教えていた。そういった経験はどんなものでしたか?あなたの才能に見合わない仕事だとおもいませんでしたか?
V: いや、優れた録音を沢山聴けるよい機会だと思ったし、そのすばらしい録音をカスタマーに推薦できる仕事だと思った。人の役に立つ仕事をしていると思った。よかったよ。いい寄り道だと思った。治療を続け、昔に戻れるという希望を持つ一方でね。
P: あなたは私的な会合などで弾き始めました。いつ、「これならまた弾けるかも」と感じましたか?リサイタルピアニストとしての復帰は簡単でしたか?
V: だんだんと、だった。というのも、当初は、私は10-15分程度しか弾けなかったから。レスリー(レスリー・ハワード)博士が親切にもリスト協会の年会で弾くように招待してくれて、私は10-15分の後期リスト作品を弾く機会があった。それくらいなら私でも弾けた。
P: あなたは今回「ダンテソナタ」を選びましたね。この曲の何があなたにとって特別なのですか?
V: 極限にある作品だ。情念の巨大なキャンバスに、天国、地獄、煉獄を描いている。
P: 天国、地獄、煉獄にいる人々ですね。
V: その通り。その音楽は非常に現実的で、そして描写的だ。
P: あなたはまじない師や治療師に通ったと言いましたが、復帰までの精神状態は今までどのように変わっていったのですか?
V:
「もう駄目かもしれない」と思ったこともあった。ひどく焦ったし、いわば「真っ暗な空気」であったこともあった。だが、家族や支持してくれる友人サークルのお
かげで、続けるという勇気をもらった。指揮したり、他の違う音楽の表現方法を取ることも考えたが、「自分はどんな形でもピアノとともにいる運命だ」と思っていた。だ
が、時間はかかった。大事な事は希望を捨てないということに気づく事。自分が与えられた小さな才能に信念を持つこと…….。
P:
あなたのような才能の持ち主が、怪我からの長期の復帰後にそのような事を言うのは大きな事だと思います。一つ質問があるのですが、当時沢山のパブリシティ
があり、あなたは自身の演奏によって、いわゆる「神童」というレッテルを貼られました。どのように受け止めていましたか?それはちょっとした重荷でし
たか?アンフェアなものでしたか?それともフェアなものでしたか?
V: いや、私はそれは自分に課せられた責任で、なにがしかの能力を与えられたのだから、その能力に対して正当な、ベストの努力をしなければいけないと思う。それによって世界は音楽という天才を共有できる。結局、それが一番重要なことなんだから。
P: アンジェロ・ヴィラーニ、リストのダンテ・ソナタ。今週末、ロンドンでライヴ公演で演奏されます……………。
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