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作曲家の意図を探る (2):リスト「ロ短調ソナタ」の一音
Tomoyuki Sawado (Sonetto Classics)
実は、この議論を解決するのにもっとも優れた資料を提供するのが自筆譜(ref 8)だ。というのも、当該箇所で、リストは737-740小節を きっちり書いておらず、単に下の譜面を一度だけ書き、「Bis=二回」と書き加えているからだ。つまり、リストのオリジナルの意図は同じ音型を二度繰り返 すことにあり、738小節と740小節に違いがあってはならない。すなわち、D#/D#か、(記入ミスを前提とした)Dナチュラル/Dナ チュラルのいずれかがリストの意図に沿い、フリードハイムのようなD#/Dナチュラルの混合型は、作曲段階では一切想定していなかったことになる。この 「Bis」に込められた明確なメッセージに研究者達が一切注目していないのは驚くべきことではある。
m. 738 |
m. 740 |
|
Lizt's Autograph
Manuscript (1853) |
D# |
Repeat m.738 (=D#) |
Breitkopf und
Härtel, n.d.(1854) (1st edition) |
D# |
D# |
Szendy's score
with Liszt's autograph marks (1884) |
D# |
D# |
Ramann Pädagogium
(1908) |
Not mentioned (=D#) | D# |
D'Albert's interpretive edition (1917) | D# |
D# |
Other editions (e.g. Sauer(1924) | D# |
D# |
Friedheim's piano roll recording (1906) | D# |
D natural |
Friedheim's
interpretive edition (2011) |
D# |
D natural |
D'Albert's piano roll recording (1913) | D natural |
D natural |
Klindworth's
comment cited by da Motta (1924) |
D natural | D natural |