アンジェロ・ヴィラーニ・アット・BBC (2016.2.17)


S: ショーン・ラハティ

A: アンジェロ・ヴィラーニ

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S: 次のゲストはチャイコフスキーコンクールの直前に23歳の時のキャリアを絶たれた神童です。彼はコンサート活動に復帰した際は批評家からの賞賛を受け、ベ ンジャミン・グロヴナーは彼の素晴らしく確信に満ちた、強烈な演奏を賞賛しました。アンジェロ・ヴィラーニがダンテによるインスピレーションを受けてここ にいます。

S: さて、君は悪魔的な音楽を弾いてくれるんだね。

A: そう、そうとも言えるかもね。面白いことに、このアルバムを何年か前に考えついた際に、私のプロデューサーのTomo Sawadoがダンテのインフェルノの登場人物に 注目し、彼らにちなんだ音楽を見つけて組み合わせるというアイデアを思いついた。もちろん、ダンテ・ソナタはフランチェスカ・ダ・リミニを扱っているし、 ディドーの嘆きからディドーなど….

S:ではまずディドーを聴いてまた戻ってこよう。ニュースの後で喜んで話を聞くよ。君の解釈によるパーセル「ディドーの嘆き」だね。

A: そう、これはとても特別で親密な音楽だ。

(演奏、ニュース)

S: …トリスタンとイゾルデの前奏曲。カラヤンによるバイロイト祝祭O。1952年のもので、「髪の毛が逆立つような演奏で、この編曲の重要なレファレ ンス」。これはゲストのアンジェロ・ヴィラーニによるもの。彼はヴァーグナーだけではなく、リストとその一家について述べようとしている(笑)。リストは ただでさえ難しいというのに、君はリスト以上に編曲を難しくしたのかい?

A:こういった編曲を作る際は自分の体にあったものを作らなければいけないんだ。リストはそうした。彼の筆致を見れば、彼の手の大きさにあった曲を作って いたことがわかるし、ショパンやラフマニノフもそうだった。私はフォン・ビューローの編曲を使い、それからタウシックの素晴らしいパラフレーズを使おうと したが、結局使わず、フォン・ビューローとリストのものに私自身の編曲を少し加えた。

S: 君はコンサート活動に復帰するまで時間がかかったわけだけど、チャイコフスキーコンクールのときの神経痛---とてもひどい経験だったんじゃないかな?

A: そう。もう弾けないとなった時にはとても難しかった。英国に来て専門医たちにかかった時は一月程度で解決すると思ったんだが、結局ここまでくるのに25年 もかかってしまった。

S: ものすごく長いね.....。

A:しかし、だんだん良くなっているんだ。嬉しいことにそういえる。もちろん、アスリートも音楽家も同じで、こういった問題と常に付き合わなければいけな い。

S: マジックにかかったかのように突然よくなったりしたのかい。

A: いや、段階的にだね。中国のtui-na(推拿)の専門家にかかっていて、彼がここ10年以上の間、非常によくやってくれたんだ。

S: 忍耐が必要というわけだ。復帰できるとなった時はどうだった?それはそれでまたストレスだったんじゃないかい?心理的にだけではなくて、君の指は長い間ピ アノを弾いていなかったわけだから。

A: とてもストレスのかかるものだった。若い頃は人前で弾くことは緊張したけれど、なんとかそれを克服することができたものだ。しかし、それを四半世紀にわ たってやっていないとなると、とても怖くなる。だが、私は徐々にコンサート活動に復帰していった。友人の私的パーティの場で弾いたり、もちろん、私が話し ているのは短い曲のことだけれど、少しずつ弾ける曲を増やしていった。ロンドン・デビューコンサートまでには、ふさわしいプログラムを用意できるように なった。とても大変だったと言わねばならないが。

S: なんてこった。まるでフル・マラソンに備えて準備するかのようだ。しかも当日までそれが可能かどうかわからない・

A: そう、保証はないんだ。

S:それから君は白い手袋をはめているね。たしか以前、コンサート活動に復帰した時に、それは君の感覚の助けになると言っていたね。

A: 妙な話なんだけど、綱を渡る際の綱渡り芸人の足を想像してほしい。もしあまりに綱をしっかりつかみすぎるような場合…本来ならバランスを感じなければいけ ないものなんだ。手袋はバランスを感じる助けになる。鍵盤を「掴みすぎる」ことを避けることができる。それによって手首や腕が正しく機能し、重力を感じる ことができる。

S: ちょっと考えると風変わりに思えるね。感覚が鈍くなる気がするんだけれど。

A: 最初は難しかった。何年も昔、初めて手袋を使い始めた時は。指がそこら中に滑っていったものだ。しかし驚くべきことに、すぐにその感覚に慣れ、関節をリ ラックスさせて重力の助けを得られることができるようになった。無理な力を使わずに、より自然に腕と体の重みによって有機的な響きを作ることができるよう になったと言えるね。

S: 素晴らしい。いずれ君が帽子からウサギを取り出すんじゃないかと尋ねる人も出てくるだろうね。

A: そうそう(笑)、見た目はまるでマジシャンだからね。

S: 白い手袋をはめてね。いや、君はマジシャンだよ。君がピアノでやっているのはまさにそれだから。

A: それはどうかな。良いものが出来るような努力はしているけれどね。

S: さて、君はアルバムを完成した。日本で弾くんだってね。

A:そう。5月24日と25日に東京で初めて弾く。エキサイティングだ。それから年末にできればイタリアでリストとワーグナーの足跡を辿るというツアーを やれれば、と思っている。

S: ああ!それは素晴らしい。「巡礼の年」だね。

A: そうあれば、と思っている。

S: 喜んでご一緒したいね。

A: 歓迎するよ。

S: エステ家の山荘に私の部屋を予約しておいてくれ。

A: 素晴らしい。

S:君のために携帯をオンにしておこう.....さて、もちろんリストとヴァーグナーは深い関係があったね。

A: もちろん。

S: ヴァーグナーはリストの娘と結婚した。そしてもちろん、リストはヴァーグナーの音楽を高く評価していた。彼の編曲は聴衆を増やしたと思う。

A: その通り。彼はその観点では多くの作曲家を助けた。ヴェルディ、ベルリーニ、ドニゼッティ……..私の考えでは当時、我々の時代のステレオやテレビのよう な役割を果たしていたと思う。大衆がアクセスする手段として、当時はピアノがあった。

S: ありがたい。未だに我々の人生で重要な位置を占めているわけだ。それでヴァーグナー、リスト、そしてヴィラーニによるトリスタンとイゾルデの幻想曲、トリ スタンとだけ言っているけれど。

A: 実際には「トリスタンとイゾルデ」なんだけれど、主なテーマはトリスタンなんだ。それからイゾルデが少し、そしてブランゲーネも登場する。

S: ありがとう。君がきてくれて嬉しかったよ。アンジェロ・ヴィラーニがいま鍵盤からマジックをもたらすためにピアノに向かっています……….

(演奏)



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