Also sprach Nyiregyházi

Photo (C) Yoshimasa Hatano




隠遁生活について

マネージャーといろいろな問題があった。プログラムの選曲や、いろいろと気に入らない状態で演奏させられた。(1)


マネージャーとNYで問題があったのは事実だ。それと、コンサートを私の方法で出来なかったのも原因だ。演奏するには、完全な自由がいるのに、それがな かった。自分にとっては、自由こそが表現の目的だ。実際の人生においても、自分は自由に、感じるがままに生きてきた。それなのに、演奏活動には制約が多す ぎる。(3)


私自身の自由を守りたかった。音楽としての自由を守れる見込みが無かった。しかし、自分自身の自由は守ってきたつもりだ。(3)


当時の音楽会のあり方に失望していた。(3)


(地下鉄駅の構内で寝ていた、という質問に)そこまで行くと大げさだよ。そんなことが何回かはあったが.......。1925年頃の数日間だけで、そんなにひどい生活じゃなかったよ。(3)


ピアノ演奏

他人のためにピアノを弾くのは好きじゃない。時々、人前で演奏はするが...........。自分の愉しみのために弾くのは好きだ。自分の気分がいい場合に弾くのだから、その反対は嫌だよ。それでも弾かねばならない時は弱ってしまう。(1)


練習そのものにあまり意味はない。私の演奏は感覚と情熱が支えているから。(2)


今もピアノは持っていない。聴こえてくるから弾く必要がないんだ。キーがなくても、手や指の動きで感じ取れるからね。(3)


他人の曲を弾く時は、速いものも弾く。だが、感情的にも性格的にも、遅い曲が好きだ。深くて暗い、悲劇的な曲が好きなんだ。そういう音楽の方が私に近いと思う。(中略)。他人に押し付けるつもりはない。私も自由で、他人も自由だ。(3)


一番大切なのは、本当に私が感じていること、感情を表現できるかということだ。音楽を通じて、自分が人生について感じていることを表現したい。(中略).........感情を出来るだけ集中し、リアルに表現したいんだ。(3)


できるだけ真剣に、その作曲家の真の精神に沿うようにしている(3)


低音は厚くしている。私が人生に感じる暗く、悲劇的な深い感情はその方が表現しやすいからだ。(3)


作曲、批評家

自分の作品は、ピアニストや評論家に批判され、理解されないと思うから発表しない(中略)。良いとか悪いとかの以前に、古い19世紀のスタイルで書いたから駄目だと言うだろう。そんな態度をとる人の前で発表するつもりはないね。(1)


プロの演奏家や批評家が私の作品を好むとは思えないね。(3)


批評家は一般の聴衆とは違う。(中略)........彼らは、聴衆を支配して間違った道を歩ませようとしている。


尊敬する作曲家、演奏家

私の考えは、リストに少しでも近くなりたいと思っている。共通するところがあると思う。(1)

チャイコフスキー、ワーグナー、グリーグなど、数えきれない。(2)

19世紀の音楽、リスト、ワーグナー、チャイコフスキー、ブラームスの曲に親近感を抱く。20世紀の音楽は好きではない。

(関心があるピアニストは)パデレフスキーとブゾーニ。この二人については、生前の生演奏を聴いた。ホロヴィッツも好きだ。(2)

リストは本当に好きなんだ。彼の理想主義、自由への愛が好きだ。彼は自由に対する熱狂的な信仰を持っていた。精神的な崇高さを求めるところは私に似ていると思う。(3)


レコードについて


レコーディングについては反対ではないよ。(1)


(高崎録音について)本当に作ってほしいんだ。今までのレコード会社(コロンビア)との契約があるのだが、それがどういう状態にあるのか.......手 紙を出しても返事がこないので困っている。(中略)。私としてもレコードが出るのを希望しているので.......。(1)



音楽以外について

私は現代文明はあまり好きではない。(1)


最前を尽くして生きてきたが、満足はしていない。もっといい生き方ができたかもしれない。だが、出来ることはしてきたつもりだよ。(3)


音楽ビジネスがあるために、聴衆が本来の形で反応できなくなっている。音楽ビジネスは非常に悪い影響を聴衆に与えている。希望は薄いね。遠い将来はどうなるかわからないが、今の状況はかなりひどいのではないか。(3)


日本について


日本の人々は、私が表現したいものをより好意的に受けれてくれると思う。他の国よりは私のやり方を受けれてくれると思っている。


消えてしまうとすれば、この日本で消えてみたいもの。きっと快適だろう。(3)







(以下の文献より引用したものを少し変えている)

1) 音楽現代、1980
2) 上毛新聞、1/20/1982
3) NHK、今この人に、1982